あかあしの足跡

自らの目で見た映画を独断と偏見でぶった斬るブログ!たまに映画以外に漫画も

ミッドナイト・バス

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2018年 ‧ ドラマ ‧ 2時間 37分

不意にこういった作品と出会えるから映画は人との出会いと似て面白い。


バツイチの利一は新潟⇔東京間の深夜バスの運転手。東京にいる彼女との将来を考えてた矢先、バスに乗車してきたのは、16年前に別れた妻だった。


全体的に俳優陣の演技がとにかく素晴らしく、特に原田泰造の役者としてのポテンシャルの高さとその魅力が存分に発揮されていた。新潟では「親」東京では「男」と違った顔を持ち、恋人と元妻と家族の間で苦悩する姿から、男として親としての不器用な顔などは人情味が溢れ出て、誰に対しても無用な優しさが目立つ反面、過去の傷を未だ引きずりながら

 

16年ぶりに再開した元妻美雪の憤る様な冷めた態度や行動を寛容に受け入れ、息子や娘に対する親として今まで向き合ってこなかった現実問題も確りと、痛みや苦しみを伴うも前向きに生きていこうとする姿勢や心情はごくごく自然体で下手に説教臭くないところも素晴らしく、少しづつだが壊れてしまた絆や失った時間を取り戻すように再生していく様は感動的で、冒頭から色々な部分に伏線となるピースが散りばめられてたり、祖父を演じた長塚京三がさりげなく口にする台詞がとてもよく

 


「男親は扇の要だ、バラバラになりそうな家族を支えているんだ。」

「白鳥は家族で飛ぶ、白鳥にだって出来るのに人はどうしてうまくやれないんだろ」

 


利一が恋人に別れを告げるシーンでは、正直酷い奴だという、印象が映りがちであったが、その後の展開で利一の本当の心情が読み取れた時にはなるほどっ!思わせる場面があり、もっと上手い方法もあったにもかかわらず、不器用ながらにもそのある選択をした利一の後ろ姿には1人の親として、男としての優しさ強さを学んだ。


最後にそれぞれが、本当の想いや気持ちと向き合い新しい道へと踏み出してゆくシーンはタイトルの"ミッドナイトバス"がある意味、伏線になっているかのような気もし、一筋の光が見え主人公の利一が長い長いトンネルを抜け出し、朝陽が射すような情景が自然と浮かんでくるかのような優しく丁寧な心のありようが、ちゃんと伝わってきて思わずホロリときてしまった。


新潟の白鳥の郷や雪景色などの何気ないシーンは、その時の心情に重なるような細かい描写もとてもよくできて登場人物の表情一つ一つが本当にリアルであり、恰も普段から実際にその場で暮らしているかのように描かれた姿は、自分を含めて現代社会で生きる人々の心模様を模しているかのような印象的が残った作品であった。